Person of note-島根大学 佐藤利栄助教 特別寄稿

●佐藤利栄助教、国際誌2024年最多閲覧論文に選出
●スウェーデンのプライマリヘルスケアに着想を得た日本の医療制度改革案
 島根大学は、2024年に国際誌「Journal of General and Family Medicine」に掲載された医学部救急医学講座の佐藤利栄助教の論文が、同誌ウェブサイトにおいて年間で最も閲覧された論文として「Top viewed article in 2025」に選出されと発表した。

佐藤利栄助教

「Journal of General and Family Medicine」は、一般内科、家庭医療、プライマリケア領域を中心とする日本プライマリ・ケア連合学会の公式英文学術誌で、国内外の医療者に広く読まれています。
 佐藤氏の論文「A proposed medical system change in Japan inspired by Swedish primary health care: Important role of general practitioners and specialist nurses at primary health care centers」は、佐藤氏がスウェーデン留学中に執筆したもので、日本の医療制度が抱える「高齢化に伴う医療費の増大」や「医師の過重労働」といった課題に対し、スウェーデンのプライマリケア制度を参考にした新たな医療体制の可能性を提案したものである。
 スウェーデンでは、地域のPrimary Health Care Center(PHCC)に勤務するGeneral Practitioner(総合診療医)とSpecialist Nurse(専門看護師)が連携し、地域医療の多くを担っている。高度医療や専門医による診療は、必要と判断された患者が総合病院で受ける仕組みとなっており、専門教育を受けた看護師が診療の一部を担うことで、効率的かつ持続可能な医療体制が実現されている。
 佐藤氏は、2023年から2024年にかけて上原記念生命科学財団の助成を受け、スウェーデン・ルンド大学医学部Clinical Research Centerに留学した。現地の医療体制を実際に経験する中で、「限られた医療資源をいかに有効活用し、国民皆保険制度を維持するか」という自身の研究テーマに大きな示唆を得たという。
 佐藤氏は、「医師になって以来、日本の国民皆保険制度を将来にわたり維持するためには何が必要かを考え続けてきました。このたびの選出を通じて、多くの方々が同じ問題意識を共有してくださっていることを実感し、大きな励みとなりました。今後も臨床医としてだけでなく、研究者としても、日本のより良い医療制度の実現に向けて研究を続けてまいります」と話している。
 以下は、佐藤氏による日本語訳の論文である。

佐藤利栄助教による SPECIAL ARTICLE(特別寄稿)

スウェーデンのプライマリヘルスケアに着想を得た日本の医療制度改革案

スウェーデンのプライマリヘルスケアに着想を得た日本の医療制度改革案 ―プライマリヘルスケアセンターにおける総合診療医と専門看護師の重要な役割―
Rie Sato MD, PhD¹,² / Ulf Jakobsson PhD, RNT, PHN¹ / Patrik Midlöv MD, PhD¹
1 ルンド大学医学部臨床科学科 プライマリヘルスケア研究センター(スウェーデン・マルメ)
2 島根大学医学部 救急医学講座(日本・出雲市)
J Gen Fam Med. 2024;00:1–10. DOI: 10.1002/jgf2.726(原著論文)
本稿は、Sato R, Jakobsson U, Midlöv P. “A proposed medical system change in Japan inspired by Swedish primary health care: Important role of general practitioners and specialist nurses at primary health care centers.” J Gen Fam Med. 2024;00:1–10. の日本語訳(抄訳ではなく全訳)です。原著はCreative Commons Attribution Licenseのもとで公開されたオープンアクセス論文です。

要旨
日本国民はこれまで、社会経済的地位にかかわらず国民皆保険制度の恩恵を受け、質の高い医療を享受してきた。しかし、進行する高齢化社会と増大する社会保障費により、日本の医療サービスは深刻な財政危機に直面している。多くの受診は医療費と医師の過重労働を押し上げており、これを是正する動きが進みつつあるが、医師の業務を他職種に委譲することなくその目標を達成できるかは疑問である。スウェーデンは日本と類似した健康指標を示す一方で、医療制度は大きく異なり、プライマリヘルスケアセンターに配置された総合診療医(GP)と専門看護師を中心に構築されている。両者は業務負担・責任・患者の継続的なケアのニーズを分担し合いながら協働している。その結果、受診件数は少なく抑えられ、入院期間は短縮され、医師の労働時間も守られている。スウェーデンのプライマリヘルスケアに着想を得た制度改革は、日本社会にとって有力な解決策となりうる。
キーワード:総合診療医、日本の医療制度改革、プライマリヘルスケア、専門看護師、スウェーデン

1|はじめに
日本の医療は、公衆衛生および医療成績の面で世界最高水準にある。2000年のWorld Health Report(世界保健報告)―各国の医療制度のパフォーマンスを示す指標―において、WHOは日本を総合的な医療制度達成度で世界第1位と評価した¹。2023年に発表された世界の医療制度ランキングでは、日本はシンガポールに次いで第2位と評価されている²。しかし、日本の高齢化社会³と増大する社会保障費4,5(年金・医療・福祉を含む)は、財政危機により国民皆保険制度を崩壊させかねない脅威となっている⁶。税金や国民健康保険料を負担する生産年齢人口は減少を続けている⁷。高齢化が進む日本社会において、国民皆保険制度を維持することは最も重要な課題である。部分的な構造改革という観点から、池上氏は日本が取りうるいくつかの選択肢を提示しているが⁸、日本の医療制度を抜本的に変える必要がある。

1.1|日本の医療制度とその歴史
日本に住む人々は、原則として社会経済的地位にかかわらず、国民皆保険制度の恩恵を受けて質の高い医療を受けてきた。医療費や診療報酬は全国一律であり、これは大学病院のような大規模な病院やクリニックでも原則として同じである⁹。医療費は国民健康保険制度、政府、そして自己負担(一般的に総額の30%だが、年齢や社会経済的地位によって決定される)によって賄われている⁴。また、高額療養費制度(限度額適用認定証)と呼ばれる仕組みもあり10、一定の基準額(居住する市区町村や社会経済的地位により定められる)を超える高額な医療を受けた患者は、費用の一部の支払いを免除される特典を受けられる。

図1は、日本の医療および国民皆保険制度の概要を示したものである。1961年に確立された国民皆保険制度は「フリーアクセス」政策を実現し、日本国民は公立・私立、診療所・病院を問わず、どの医療機関でも自由に選んで受診できるようになった11。国民皆保険制度の確立により、日本国民が「病院やクリニックに行き、医師の診察を受ける」ための敷居が下がった。受診料は誰にとっても負担可能な水準に設定されたためである。栄養状態と衛生状態の改善、そして受診の敷居の低下は、日本国民の寿命の延伸に寄与した11。受診が増えるにつれて、医師と病床の不足が生じた。この問題に対処するため、日本政府は各都道府県に少なくとも1つの医科大学を設置する方針(「一県一医大構想」)を決定し12、病院にも病床数の増加を促した。この構想により、医科大学の数は64校(1973年)から80校(1979年)へと拡大し、全国の医科大学の卒業生数は1979年に年間8,000人に達し、これは人口10万人当たり150人の医師に相当した12。しかし、一県一医大構想は受診の増加をもたらし、医療費もまた拡大した。当時、日本経済は1973年まで続いた高度経済成長のおかげでこれを賄うことができた。出来高払い制であった診療報酬制度は、患者により頻繁な受診と長期の入院を促す結果となった。高度経済成長期の終了後、日本政府は医療費を抑制する必要に迫られたが、複数の医療機関への頻繁な受診や長期入院といった患者の行動様式が変わらなかったため、医療費は拡大を続けた。医療費、特に高齢者の医療費は1980年までに増加した⁹。1982年、長期入院を是正するために老人保健法が制定され、医療を必要としないが自宅に戻れない高齢者が、病院から高齢者向け介護施設へと療養の場を移せるようになった。1984年には国民健康保険法が改正され、限られた収入しかない高齢者を含め、医療機関の窓口での自己負担割合は段階的に引き上げられてきている。

1.2|日本の医療制度の財政危機
2020年までに、日本の医療費総額は42.9兆円(3,000億米ドル)に達し、国民1人当たりの医療費は34万円(2万4,000米ドル)に達した⁴。65歳未満の平均医療費が18万3,000円(約1,300米ドル)⁴であるのに対し、75歳以上では90万2,000円(約6,500米ドル)に上る⁴。高齢の患者は若年の患者よりも多くの医療費を必要とする。高齢化社会がさらに進行するにつれて、より多くの医療費を必要とする人口は増大していく。日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は28.9%で世界最高であり³、合計特殊出生率は1.26と世界最低水準にある13。財源を補うため、政府はより多くの国債を発行しており、2021年には9,900億円(約71億米ドル)に達し14、国民1人当たりの国債費は713万円(約5万1,000米ドル)に達している14。経済の停滞に伴い、所得は減少している⁸。労働者の保険料負担率は引き上げざるを得なくなり、保険料を支払えない人々も増えている⁸。これに加えて自己負担額も徐々に増加している。日本の国民皆保険制度の優れた点の1つは、社会的地位や所得にかかわらず、日本に住むすべての人が同じ質の診察・治療・投薬を受けられることであるが、こうした機会は、保険料や自己負担分を支払えない人々からは奪われかねない。この状況は、貧困層にとって医療へのアクセスを妨げる見えない、しかし厳然たる障壁となっており、彼らは社会から取り残されるリスクにさらされている。
日本の受診件数は他国と比べて非常に多い15。2019年の日本における1人当たりの年間受診回数は12.5回であるのに対し、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は6.8回であり、2009年以降おおむね安定して推移している15。受診のたびに初診料あるいは再診料が必要となるため、受診回数が多いほど医療費もかさむことになる。歴史的な経緯から、出来高払い制度がほとんどの診療所・病院、特に長期療養部門を持つ施設で採用されている⁸。この制度のもとでは、診療所や病院はより多くのサービスを提供するほど、診療報酬点数表の範囲内である限り、より多くの支払いを受ける。点数表に収載されていないサービス・薬剤・医療機器は、診療所や病院が自己負担で提供しなければならない⁹。点数表は価格のみを定めるものであり、医療提供者は実質的に出来高払いモデルに沿って報酬を得ている⁸。診療報酬点数表の改定は2年ごとに行われ、政府と医療提供者の間で政治的に交渉される8,9。2021年時点で日本の病院数は約8,200施設であった一方16、診療所数は約10万4,000施設であった16。診療所の開設に対する規制はほとんどなく、多くの小規模な診療所や病院に多額の医療費が支払われている。出来高払い制度に紐づいた全体を俯瞰する管理体制は存在しない11。加えて、かつては医師が90日を超えて投薬を処方できないという処方ルールが存在していた。このルールは2002年に廃止されたが17、患者には、病状が安定していても医師に頻繁に診てもらうことで安心感を得るという「短期間での通院を繰り返す」という好ましくない慣習が今なお残っている。多くの病院も、財務管理上の理由から独自に1回の処方の上限期間を設定しており、医師はその方針に従わなければならない。この結果、ほぼすべての医師が患者に90日未満での受診を促している。
日本で受診件数が多すぎる理由として、3つの仮説が考えられる。第一に、国民皆保険制度のおかげで、日本の患者にとって受診の敷居が低いことは合理的に理解できる。自己負担が高額ではないため、些細な健康上の問題であっても人々は気軽に受診する。第二に、前述のとおり医師が患者に頻繁な受診を促していることが挙げられる。第三に、プライマリケアを担う診療所は、紹介を通じて保険者から報酬上のインセンティブを受け取ることができるため18、診療所の医師がより多く患者を紹介する動機を持つ。診療所の多くの「一般医」はかつて病院で働く専門医であったため、患者の病状が自身の専門分野でない場合には、しばしば患者を病院に紹介する。患者が診療所で診察・治療・投薬を受けた後に病院へ紹介され、同様のサービスを受けた場合、その医療行為が点数表の範囲内である限り、審査支払機関は診療所・病院の双方に対して報酬を支払う⁸。紹介によって新たな医師に診察されるたびに、初診料が必要となる。
受診の頻発や長期入院といった患者の行動様式は、高度経済成長が終わった後も1970年代から変わっていない。患者は異なる健康問題ごとに異なる専門医を受診する。また患者は、地元の診療所よりも著名な医療機関を受診することを好む傾向がある⁸。病院には多くの専門医がいるため、患者は病院を受診し、複数回の受診を重ねることになる。患者はしばしば診療所から病院へ紹介されるため、多くの患者は紹介状なしで直接病院を受診する方が早いと考えている。大病院への患者集中を抑えるため、紹介状のない患者には追加の特別料金(選定療養費)が設定されているが⁸、多くの患者は料金をあまり気にしていない。日本の患者は他国と比較して長期間入院する傾向にある19。2019年における平均在院日数は、日本では16.0日であったのに対し19、OECD加盟38か国の平均は7.6日であった19。これは老人保健法制定以前の歴史的な長期入院の慣習の名残とも言える。医師が患者を安心して退院させられない理由がいくつか存在する。日本の患者とその家族は、医療従事者や医療設備の近くにいることで「安心感」を得られるため、安全と「心の平穏」のために入院を長く続けることを望む傾向が続いている。同時に、全国的にプライマリケアのための専門教育を修了したプライマリケア医が不足しており、プライマリケア医の新たな養成プログラムが2018年に日本で開始された20,21。こうした状況のもと、病院で働く医師が地域で適切なプライマリケア医を見つけられないことがあり、これが長期入院の一因となっている可能性がある。

1.3|現行医療制度における医師の過重労働
一般に、日本の医師の過重労働は深刻な問題である。
歴史的に、日本は1800年代半ばにドイツの医療慣行を広く取り入れており9,22、これは臨床病理志向の医療ではなく、研究志向の医療を重視するものであった。日本ではすべての医科大学が自前の大学病院といくつかの医局を有している22。医局制度はドイツに起源を持つ22,23。医局には教育・研究・臨床という3つの主要な目的がある22。医局は若手医師に専門教育を提供するため、多くの若手医師が医局に所属して専門医になることを志向する傾向にある。今日では、医師自身も国民も、医師は専門医であることを期待するようになっており、多くの若手医師は初期臨床研修を終えるとすぐに専門医研修を開始したいと考えている。医師のみならず日本社会全体が、こうした歴史的な流れの中で専門医中心の医療という考え方を受け入れてきた。多くの患者は医師の専門性を重視し、健康問題が深刻でなかったり、専門医が対応するほど高度でなかったりする場合でも、それぞれの専門医の診察を熱心に希望する傾向がある。大学病院では、多くの受診が医師を外来診療に長時間拘束するだけでなく、研究者や教育者としての重要な役割を果たすことも難しくしている。病院で働く医師は入院患者の管理にも責任を負わなければならない。医師が極端に不足している地方の中小規模の公立病院で働く医師の負担は深刻である。前述のとおり、医局は日本の大学病院を象徴する存在であり22、各地域における医師の配置を決定する強い影響力を持つ。医局グループは政治的・財政的な理由から関連病院に医師を派遣してきたが22、それぞれの病院の需要に応じて医師の配置という要望に応えてきた19。日本では、医科大学を卒業した研修医のほとんどが、日本の2つの法律―医師法24および医療法25―に基づく最初の2年間の研修期間(初期臨床研修)を病院で修了する。医師法第16条の2は、医科大学を卒業し医業に従事しようとする医師について、診療に従事しようとする医師は、2年以上、都道府県知事の指定する病院などで臨床研修を受けなければならないと規定している。医療法もまた、病院長・診療所長となるためには初期研修を修了しなければならないことを定めている。2002年に医師の新臨床研修制度が導入されて以降、研修医は日本全国から自由に研修先の病院を選べるようになった(図1)。この制度が始まる以前は、若手医師は出身大学の大学病院に留まる傾向があり、医科大学卒業後すぐに医局に入る傾向があった22,26,27。新制度が始まって以降、若手医師は母校に留まらず都市部で働き始める傾向が強まり⁸、地方に留まる若手医師は少なくなった。若手医師が都市部へ流出した後、地方の大学における医局の人的資源の不足も深刻化し、地方の中小規模の公立病院への支援医師の派遣に消極的になり、状況はさらに悪化した。地方の中小規模の公立病院で働く医師は、常勤職員の減少だけでなく、かつて医局から派遣されていた非常勤職員の減少という人的資源の不足の結果として、多くの外来診療と入院管理という重い業務負担に苦しんでいる。この日本全国にわたる医師の偏在は、そうした病院で働く医師を過重労働により疲弊させている。厳しい労働条件と病院での重い責任のために医療の実践を諦め、自身のクリニックを開業する医師もいる。こうした病院で働く医師の総数はさらに減少し続けており、その結果、残った医師の業務負担はますます大きくなっている。この現象が、地方における地域医療の崩壊を招いている可能性がある。

日本ではすべての職種において週の最大労働時間が40時間と法律(1947年制定)で定められている28。しかし、多くの医師が「例外」として時間外労働―残業、休日労働、日直、当直―を行うことが認められている。実際には、日本の医師の労働時間には現在のところ上限が存在しない。厚生労働省は2006年に医師の労働時間の実態を公表し、日本の勤務医は平均して週79.6時間働いていることを明らかにした29。この状況を改善するため、厚生労働省は「働き方改革」を進めている30。2024年からは、医師の労働時間に上限のない仕組みは廃止され、すべての医師は労働時間の制限内で業務を終えなければならない。制限を超えて勤務した場合、医師を雇用する施設が罰則を受けることになる。しかし、医師の職務や業務を委譲することなくこの目標をどのように達成できるかは疑問である。日本は他国から看護師を受け入れ始めているが、日本で医療業務に従事するためにはまず日本語を習得しなければならない。外国人医師にとっても、日本で医業に従事するためには日本の医師国家試験に合格する必要があり、これも困難である。

1.4|日本とスウェーデンの比較
スウェーデンは、最も洗練された社会保障・医療制度を持つ国の1つとされている31。OECDと世界銀行のデータによれば、日本とスウェーデンの間には多くの類似点がある。たとえば合計特殊出生率[日本1.30(2021年)/スウェーデン1.67(2021年)]32、GDPに占める医療費の割合[日本10.90%(2020年)/スウェーデン11.28%(2021年)]33、1人当たり医療費[日本4,388.10米ドル(2020年)/スウェーデン6,914.91米ドル(2021年)]34、出生時平均余命[日本84.5歳(2021年)/スウェーデン83.1歳(2021年)]35、乳児死亡率(日本1.7/1000、スウェーデン1.8/1000)36、小児予防接種率[麻疹:日本95.4%(2021年)/スウェーデン92.5%(2022年)、ジフテリア・破傷風・百日咳三種混合:日本98.8%(2021年)/スウェーデン94.3%(2022年)]37などである。
医療の財源構造も類似している。日本の医療制度と看護・福祉サービス制度は、国レベルの厚生労働省によって統括されている。医療費のうち約40%は税金、50%は保険料、残りは自己負担で賄われている⁴。一方、スウェーデンの医療制度は国・地域(レギオン)・基礎自治体(コミューン)の3層で構成されている。国レベルでは保健社会省が政策の策定を担う。スウェーデンには21のカウンティ(レギオンとも呼ばれる)があり、これらのレギオンが、病院での専門医療やプライマリヘルスケアセンター(PHCC)でのプライマリヘルスケアといった医療の提供を、地域レベルで担っている。基礎自治体は、看護・福祉サービスを提供する在宅ケアを、市町村レベルで担っている。スウェーデンの医療制度は税金によって賄われている。2009年時点で、医療費の約70%は地方税によって、17%は国からの一般補助金によって賄われていた38
表1は日本とスウェーデンのいくつかの指標を比較したものである15,19,39-44。ここには3つの特徴がある。第一に、スウェーデンと比較して日本では医師が不足している。第二に、スウェーデンと比較して日本では受診件数が多すぎる。第三に、日本はスウェーデンと比較して病床数が過剰である。
スウェーデンは日本と類似した健康指標のアウトカムを示している。しかし、その医療制度は日本とはまったく異なるものである。以上で述べた課題に対処するため、本稿の目的は、スウェーデンのGP中心の医療制度と、多様な専門看護師という概念を日本社会に紹介することにある。

表1 日本とスウェーデンの主な医療指標の比較(OECDデータ)

指標スウェーデン日本
人口1000人当たりの臨床医数344.3(2020年)2.6(2020年)
人口1000人当たりの看護師数3510.7(2020年)12.1(2020年)
1人当たりの年間受診回数a,152.6(2019年)12.5(2019年)
医師1人当たりの推定受診件数15625(2019年)5011(2019年)
病床数21,288(2019年)361,500,600(2021年)37
人口1000人当たりの病床数382.0(2021年)12.6(2021年)
全疾患平均在院日数185.6日(2019年)16.0日(2019年)
人口10万人当たりの退院件数b,3913,012(2021年)12,327(2020年)

a 1人当たりの年間受診回数:ある年に患者が医師と行った受診の回数。 b 退院件数:入院加療を経て退院した患者数。退院とは、少なくとも1泊の入院を経た患者の退院を指し、入院治療後の院内死亡を含む。

2|スウェーデンの医療制度
2.1|総合診療医を中心としたプライマリケア制度と病院専門医との連携
スウェーデンのプライマリヘルスケア制度は、総合診療医(GP)と専門看護師を中心に構築されている。スウェーデンのすべての住民は、居住地域にある特定のプライマリヘルスケアセンター(PHCC)の登録リストに載っている。GPは、身体的な問題だけでなく精神的な問題にも対応できるよう訓練を受けており、自分のPHCCリストに登録された患者に対して責任を負う。たとえば、GPは20分の診察時間の中で、患者の高血圧、糖尿病、変形性関節症などを一括して管理することができる。患者は、日本のように循環器内科医、代謝内科医、整形外科医といった複数の専門医の診察を受けるために異なる外来クリニックを回る必要がない。GPは長期間にわたって同じ患者を継続してフォローし、患者がPHCCを変更した場合には、患者情報は新しいGPへと引き継がれる。GPは患者からの電話相談にも対応する責任を負っており、電話相談は患者の要望に応じて看護師によってスケジュールが組まれる。電話相談には料金がかからない。こうした仕組みは、同じGPによる同一患者への継続的なケアがあってこそ実現できるものである。患者とGPの間の強い信頼関係が、スウェーデン全土でこの合理的な診療スタイルを維持することを可能にしている。こうした仕組みのおかげで受診件数は抑えられ、医療費の削減につながっている。
スウェーデンでは、労働時間法により45、医師も例外なく週の平均労働時間は40時間を超えないと定められている。医師の労働時間が抑えられている理由は、GPと専門医の協力、そして専門の訓練を受けたGPと専門看護師の連携によるところが大きい。PHCCで働くGPは、外来で急性・慢性を問わず一般的な疾患を持つ患者のケアにおいて主要な役割を担う。主に専門医である病院で働く医師は、患者の特殊なケアや治療に専念できるため、一般的な疾患を持つ患者の外来診療に長い時間を費やす必要がない。病院の専門医は多くの外来診療によって疲弊することがなく、GPは入院患者の管理に煩わされることなく外来診療に専念できる。病院での特別なケアが完了すると、専門医は何の懸念もなくGPへと患者を送り返す。
GPには自身の労働時間を調整する権利がある。同じPHCCで働く他のGPが協力し合うことで、労働時間を短縮することも十分に可能である。GPは互いの労働時間の不足を補い合っており、これにより若手GPは妊娠・出産や育児をしながら、あるいは博士号取得のために大学院で学びながら働くことができる。たとえば、あるGPが博士号取得のために勉強している場合、その人は労働時間を80%に減らし、残りの時間を研究に充てることができる。小さな子どもがいるGPは、労働時間を50%に減らし、残りの時間を家族と過ごすことができる。この労働時間の削減割合は給与に反映される。
まとめると、GP中心の医療制度は、患者・社会・医師自身に多くの恩恵をもたらしうる。

2.2|専門看護師の重要な役割
2.2.1|専門看護師は独立した診療を担当する
スウェーデンには、医師の監督なしに独立して患者のケアに責任を負う専門看護師が存在する。専門看護師のおかげで、医師はより緊急性が高く専門性を要する患者に集中することができる。さらに、専門看護師による診察を受ける場合、治療や処方を伴っても自己負担は無料である。スウェーデンでは、日本と比べて医師による診察の頻度が非常に限定的である。慢性疾患を持つスウェーデンの患者が、病状が安定していれば年に2回、あるいは年に1回だけGPを受診するというのはごく普通のことである。専門看護師は、こうした患者のフォローアップにおいて大きな役割を果たしている。たとえば、糖尿病(DM)患者は、糖尿病看護師―専門分野の1つ―の診察を受けているため、医師の診察を受けるのは年に1回程度である。患者の病状が安定していれば、糖尿病看護師はインスリンの処方(用量の変更を含む)を指示することができる。患者の病状に変化があれば、専門看護師はGPに相談し、受診の予約を組む。ただし、糖尿病治療薬の処方は医師のみが行うことができる。喘息の患者についても同様の状況がある。喘息/慢性閉塞性肺疾患(COPD)看護師は、病状が安定していて悪化がなければ2〜4年に1回程度の頻度で定期的に患者を診察する。すべてのPHCCには、少なくとも1名の糖尿病看護師と1名の喘息/COPD看護師を配置しなければならない。彼らは特定の患者を担当する一方で、PHCCにおける一般看護師としての業務も行う。
専門看護師は特定の専門知識と技能を有し、特にプライマリケアの現場(すなわち地区看護師)における日常診療において重要な役割を果たしている。これらの専門看護師は自分専用の診察室を持ち、自分自身の外来クリニックを運営している。

2.2.2|専門看護師の教育
図2は、専門看護師および専門分野を修了した看護師になるためのプロセスを示している。高校卒業後、看護学校(大学)に3年間通い、資格(看護学位)を取得して一般看護師となる。専門看護師になりたい場合は、一般看護師として少なくとも1年間勤務した後、専門看護師のための特別な教育課程を受講する。看護師のための専門技能教育課程には、専門看護師プログラム(1年以上)と専門分野コースの2種類がある。専門看護師コースでは、たとえば外科、手術室看護、麻酔看護、プライマリケア、小児科ケア、高齢者ケア、精神保健ケア、集中治療、病院前救護、救急ケアといった分野の教育が提供される。専門分野コースはより短く(特定のトピックに焦点を当てた5〜10週間程度)、たとえば糖尿病看護師、喘息/COPD看護師、尿失禁看護師、心不全看護師といった分野の教育が提供される。専門看護師コースの教育期間は専門分野によって異なるが、通常は完了までに約1年を要する。たとえば、麻酔看護師、手術看護師、小児保健看護師、老年(高齢者ケア)看護師、集中治療看護師になるには1年を要するが、PHCCで働く地区看護師になるにはほぼ1.5年を要する。地区看護教育は大学院レベルの専門分野であり、学部教育を土台として看護師の知識・技能・能力を深め、最終的には複雑な現象・問題・状況に対処できる独立性を養うことを目的としている46。地区看護師のみが、高度な薬理学の補完的教育・訓練を受け、その教育に含まれる医薬品を処方する権限を有している。地区看護師は、プライマリヘルスケア、小児保健ケア、地域ケア、学校保健など複数の異なる領域で働く権限を持ち、他の専門看護師よりも独立して業務を行うことが多いため、より長い研修期間を必要とする。地区看護師はしばしば、プライマリケアの現場で自ら診断を下し、直ちに治療を開始する必要があるため、治療的な知識・技能だけでなく、診断的な訓練も必要とする。


Figure 2. The pathway to become specialized nurses.

2.2.3|地区看護師(ディストリクトナース)
スウェーデンのプライマリヘルスケアにおける専門看護師は、地区看護師(ディストリクトナース)と呼ばれる(スウェーデンのプライマリヘルスケアには他にも複数の専門分野の看護師が存在する)。プライマリケアの現場において、地区看護師は非常に重要な役割を果たしている。彼らはGPと協力し、医療チームを組織している。スウェーデンにおいて地区看護師は、医師の代替として振る舞うのではなく、質の高い訓練を受けた医療専門職として不可欠なサービスを提供している46。地区看護師の職務は多岐にわたる。第一に、すべての地区看護師は特定の種類の医薬品を処方し、ワクチンを接種することができる。処方できる医薬品の権限は限定的だが、たとえば鎮痛薬、抗真菌薬、コルチゾンクリーム、エストロゲン、一部の抗生物質など、幅広い種類の医薬品が含まれる。破傷風、肝炎、肺炎球菌、インフルエンザ、COVID-19ワクチンなどは、地区看護師が医師の許可なしに接種できるワクチンである。第二に、地区看護師は外来クリニックおよび電話相談における患者のトリアージ(緊急度判定)に責任を負う。その判断は患者の予後を左右しうるため、非常に重要である。患者が予約なしにPHCCを訪れた場合、最初の対応は地区看護師が行う。地区看護師は患者に緊急の治療が必要かどうかを評価し、もし必要と判断すれば、その日の担当GPに紹介するとともに、必要に応じて同時に初期治療を開始する。直ちに治療が必要でないと判断した場合は、医師の診療予定に予約を入れて患者を帰宅させる。電話相談における的確で明確な指示も欠かせない。患者が直ちに受診すべきか、一定期間経過観察すべきか、あるいは受診の必要がないかについての判断を下さなければならない。したがって地区看護師には、限られた情報に基づいて患者の状態を適切に評価するための、十分に訓練された技能、広範な知識、そして豊富な経験が求められる。地区看護師は、PHCCへの不要な受診を防ぐゲートキーパーとしての重要な役割も果たしている。医療トリアージや、看護師がさまざまな状況に最初に対応する方法についてのガイドラインも存在する。第三に、地区看護師は自身の外来診察も担当しており、GPからの指示や監督を受けることなく、患者の創傷やアトピー性皮膚炎・真菌感染症などの皮膚疾患の治療にあたる。地区看護師は診断を下し、薬を処方し、治療計画を立て、予約を組み、創傷や皮膚の状態が治癒するまでフォローアップすることができる。第四に、地区看護師は小児保健ケアや学校保健(定期的な小児健診や予防接種を含む)の分野でも働くことができる。小児保健看護師もこの第四の分野で働くことができる。第五に、地区看護師は患者の自宅を訪問し、医師の同席の有無にかかわらずケアを提供することができる。在宅ケアにおいて、地区看護師は個別に患者を訪問し、しばしば複雑な状態に対応する。PHCCの地区看護師は、不健康な食生活、喫煙、飲酒といった非感染性疾患のリスクを抱える人々、あるいはすでに罹患している人々と出会う中で、健康増進・疾病予防の活動においても重要な役割を果たしている47

3|考察
スウェーデンのプライマリヘルスケアは、GP、PHCC、専門看護師を中心に構築されている。GPと専門医の協力、そしてGPと専門看護師の連携は、患者の継続的なケアと費用対効果の高い制度を実現している。スウェーデンのプライマリヘルスケアに着想を得た制度改革は、いくつかの点で日本社会にとって有益となるだろう。

3.1|GPとPHCCを中心とした医療制度の確立
GPとPHCCを中心とした医療制度の確立は、患者・日本社会・医師それぞれにいくつかの恩恵をもたらす可能性があると考えられる。
GPおよびPHCCを中心とした医療制度において、患者は複数の異なる診療所や病院を渡り歩く必要がなく、自分のGPを受診するだけでよい。患者が入院した場合、病院の専門医による治療を受けることはあっても、症状が回復すればほどなく、GPが自宅で引き続きケアできるため、自宅へ退院することができる。処方が重複するといった重大なリスクもない。
医療費に関しては、受診件数が減ることで初診料や再診料を削減できる可能性がある。前述のとおり、日本の医療界はドイツ医学の慣行を取り入れており、これは「科学的医学」とも呼ばれ、病因の解明や研究を重視するものであった。予防と治療を重視する「実践的医学」とも呼ばれる英国医学とは異なる49。したがって、日本の医療実践と医療教育は現在に至るまでドイツ流―研究中心の医学であり実践中心の医学ではない―の傾向が続いており、GPはその実践中心医学の象徴の1つである。日本において「一般医」という概念にはかなり長い歴史がある。現在、地元の診療所で患者のケアにあたっている医師の多くは、かつて専門医であった者であり、GPとしての専門教育を受けていない。彼らは実際には長年にわたり、さまざまな健康問題を抱える人々を助けてきた。専門医制度は約50年前に開始され、それ以降、関連する各専門学会が専門医の教育・研修・認定を行ってきた。専門分野で活躍した後、家族が私的な診療所を営んでいる医師や、ライフスタイルの変更を望む、あるいは必要とする医師の中には、病院勤務をやめて自身のクリニックを開業する者もいる。こうした医師たちが、日本社会における「一般医」の役割を担ってきた。1968年、日本内科学会が内科専門医制度を開始した50。しかし、「総合診療医」(GP)のための専門教育は体系的には確立されてこなかった。2018年、日本専門医機構が総合診療を専門分野として承認し、GPのための体系的な教育・研修プログラムを開始した20,21。しかし、これまでのところ、専門的なGP研修を修了したGPはまだ多くない。もしGPが患者の身体的・精神的な問題を幅広く管理し、適切に病院へ紹介することができれば、診察・治療・投薬を含む重複した医療費を削減できるだろう。もしPHCCが住民数に応じて配置されれば、過剰な診療所数が見直され、出来高払いで診療報酬が設定されている診療所の減少に伴って医療費が削減されるだろう。
医師もまたこの制度の恩恵を受けられる。前述のとおり、特に病院で働く日本の医師は、入院患者の管理に加え、外来診療にも長時間を費やさなければならない。GPが退院後の患者ケアを適切に担うことができれば、病院の専門医は何の懸念もなく患者を速やかに自宅へ帰すことができる。患者とその家族が大きな不安なく患者を自宅で迎え入れられるようになれば、長期入院は減少するだろう。医師が疲弊すると、業務効率は低下し、より多くの業務が肩にのしかかる。医師のパフォーマンスの状態(performance status)が悪化するにつれて、患者ごとに適切な診察や治療を提供することが難しくなり、不必要な検査や治療が増加し、それがより大きな財政負担をもたらす。そしてもちろん、医療において最も重要な問題である患者の安全も脅かされうる。高齢化社会の結果として、さまざまな健康・社会的問題を同時に抱え、状況が非常に複雑な高齢患者の管理など、医師の業務は増え続ける傾向にある。もしGPと、病院で働く専門医とが責任を分担できれば、どちらも長期間にわたって外来・入院患者を抱え込む負担を負わずに済むだろう。
しかし、日本で新たなプライマリヘルスケア制度を導入するにあたっては、対処すべきいくつかの既知の障壁がある。若手医師向けのGP養成のための新たな研修制度はすでに日本で開始されており、幸いにも社会や医学教育はより多くの若手医師や医学生をGPになるよう奨励している。GPおよびPHCCを中心とした医療制度を確立するために最も重要なことは、「社会の準備」であると考えられる。すなわち、日本社会がこの制度を十分に受け入れる環境を整えることが不可欠である。それなくしては、GPは社会において重要な役割を果たすことも、「専門教育」とプロフェッショナリズムに基づいた医療を実践するという十分な責任を与えられることもできない。市民に対して自分のGPを「信頼」し、プライマリケアの現場でGPを受診するよう奨励することが非常に重要である。PHCCのような公的医療センターが、都市の規模や人口に応じて配置されるよう、診療所網を再構築することも不可欠となるだろう。

3.2|日本への「専門看護師」の導入
日本には、スウェーデンの専門看護師のような医療専門職は存在しない。もし日本社会が専門看護師制度を導入すれば、少なくとも3つの望ましい変化が期待できる。第一に、専門看護師が医師と業務を分担することで、医師1人当たりの受診件数が減少するだろう。スウェーデンでは、地区看護師による適切なトリアージのおかげで、PHCCを受診する患者数がコントロールされている。医師は過剰な患者数という負担と責任から解放され、1回の診察により長い時間をかけられるようになり、患者の満足度も高まると考えられる。加えて、専門看護師制度は日本における「働き方改革」の解決策となりうる。前述のとおり、医師の過重労働に関して、日本政府は2024年に医師の労働時間に上限のない仕組みを廃止することを決定している。この課題に対処するため、専門看護師はGPと連携しながら、また独立して診療を行うことができるため、医師の医療業務の一部をカバーできる存在となりうる。第二に、専門看護師による診察の診療報酬を異なる形で設定すれば、多くの医療費を削減できる。スウェーデンのように専門看護師の診察における自己負担を無料にすれば、社会における専門看護師の普及が加速するだろう。これは、貧困層が支払いを心配することなく専門看護師のもとへ通い続けられるという点でも有益である。第三に、専門看護師はより大きなやりがいと満足感を得られるようになる。より大きな職場での権限を持ち、社会から独立した意思決定者とみなされることで、患者のためにさらに知識と技能を高めようとする意欲を持てるようになるだろう。日本には優れた看護師が数多くいるが、残念ながら職場での権限の制約により、日本の医療現場でその実力を十分に発揮できていない看護師も多い。医師と専門看護師との間で責任を分担する専門看護師制度を日本に導入することは、検討に値する考えである。日本では、妊娠や育児の負担により、多くの高い資質を持つ看護師が職を辞し、現場に戻らないことも多い。看護師の仕事がより魅力的なものになれば、現場に復帰する看護師の数は増加するだろう。これは、日本全国で深刻な問題となっているもう1つの課題、すなわち看護分野における人的資源の不足に対する解決策ともなりうる。

4|結論
日本の医療サービスは、高齢化社会、非効率な財政、そして多くの受診や長期入院といった望ましくない患者の行動様式によって、深刻な財政危機に直面しており、これが日本の医師を外来・入院管理の両面で疲弊させている。GPとPHCCを中心とした医療制度を日本の医療社会に広く導入することは、患者・医師・社会にさまざまな恩恵をもたらすだろう。GP、専門医、専門看護師といった多様な専門性を持つ医療従事者の間で、複数の医療上の問題を抱える患者の業務負担と責任を分かち合うという考え方は、新しくかつ重要な発想である。それは、日本の医療サービスが現在直面している財政危機、そして医師の過重労働、すなわち「働き方改革」に対する解決策の1つとなりうる。
医師の業務負担と医療費が、深刻に進行する高齢化社会とともに増大し続けるならば、何の対策も講じなければ、国民皆保険制度の崩壊が日本を待ち受けていると考えられる。スウェーデンの医療制度を導入することが、日本社会を救う潜在的な鍵となりうると本稿では仮説として提示する。

謝辞
著者らは、マルメのルンド大学臨床科学科プライマリヘルスケア研究センターのスタッフの方々、そしてインタビューにご協力くださったTåbelund PHCC、Måsen PHCC、Nöbbelöv PHCC、Södervärn PHCCの皆様に深く感謝申し上げる。多大なご協力をいただいたGabriella Caleres氏にも感謝する。また、専門的な英文校正にご尽力いただいたPatrick O’Reilly氏にも謝意を表する。

利益相反
本研究は、公益財団法人日本国際交流基金の国際派遣プログラム2019、および上原記念生命科学財団の海外研究者フェローシップ(助成番号:20200507)の一部支援を受けた。これらの助成団体は、研究のデザイン、データの収集・分析、結果の解釈、出版の意思決定、原稿の作成のいずれにも関与していない。