●財務省、医歯薬学部定員削減・入院医療の高度化・介護の生産性向上などを提言
●善光会、おおさわの福祉会、大翔会が介護の生産性向上の好事例
財務省が2026年4月23日付けで公表した資料「人口減少社会の中での総合的な国力の強化 (財政各論Ⅰ)」(01.pdf)では、医学部・歯学部・薬学部の定員数の削減、医療分野の専門人材の効率的活用、効率的な医療提供体制の構築、介護現場の生産性向上や人口減少地域における介護サービス提供体制の構築などの提言がなされている。
⦿突出する医療・介護の就業者数増加
資料36ページ「医療・介護産業の就業者数の増大」では、(医療・介護を含む)保健衛生・社会事業において、1994年から2024年の間で、労働生産性は低下した一方、就業者数は350万人から964万人へと全産業中最大の伸びを示し、全産業就業者総数との比は、1994年の約19人に1人(約5%)に対し2024年は約7人に1人 (約14%)となり、医療・介護産業への労働投入の増加は際立っているとした。
350万人から964万人への増加は、30年間で2.75倍となったが、それでも、なお医療、介護の現場では慢性的な人手不足が続いている。
⦿理工系人材の医療分野への偏在
37ページ「医療分野への理工系人材の配分の在り方」では、医師・歯科医師・薬剤師は、いずれも総数が増加し、特に女性の伸びが顕著。また、理工系の高等教育を受ける人材の3分の1、特に女性については6割が保健分野の学問を専攻している。
人口減少が続く中で、特定の業種・分野に人材が偏ることは、他分野への専門人材の供給に影響を及ぼしていることが懸念される。 例えば、現行の医学部定員が今後も維持された場合、2050年には約85人に1人(1970年の約5倍)が 医学部に進学する見込みとなる。
こうした状況が、理工系分野の高等教育を受けた人材の配分の在り方として課題がないか、社会経済全体の発展・成長に向け、希少な人材を最大限に有効活用する観点から検証が加えられるべきではないかと疑問を呈している。
⦿医学部・歯学部・薬学部の定員数の削減を
そのうえで、38ページ「医学部・歯学部・薬学部の定員数の削減」において、最新の医師需給推計によれば、2029年~2032年の間で需給が均衡することが見込まれており、医学部6年制を踏まえると(その6年後を見越すと)、医師数が過剰となることは既に確定的であり、医学部定員を計画的に削減していくことが必要である。
歯科医師・薬剤師についても、2012年以降、国家試験の合格者数が平均で定員数の8割程度となっており、既に定員数が過剰。そもそも、 今後の人口減少や医療提供の効率化を踏まえれば、歯科医師・薬剤師を増加させる必要性は乏しいとも考えられる。 学問分野間の人材配分の適正化の観点からも、大胆な定員削減に踏み切るべきであると提言している。
⦿医療関係職の増員増より効率的な活用を
続けて、39ページ「医療分野の専門人材の効率的活用」では、医師・歯科医師・薬剤師以外の医療関係職種(看護職員、リハビリテーション専門職員)を見ても、従事者数は一貫して増加している。少子化が進む中、仮に現在の養成数が維持されれば、18歳人口に占める医療関係職種の割合は大きく上昇することとなる。2026年度診療報酬改定では、多職種の協働により患者への適切なケアが実施される場合には、事実上、看護職員の配置を緩和する仕組みが導入されたが、質が確保された希少な医療専門職を最大限に活かすという観点に立って、引き続き、職種間でのタスクシフト・シェアや多職種の連携強化を進めることが肝要。また、医療提供の更なる効率化に向け、中長期的には、現状では分断されている業際規制の見直しも検討すべきであり、例えば、医療専門資格の統合も視野に入れるべきではないかと提言している。
⦿病床数の適正化と入院機能の高度化を
40ページ「効率的な医療提供体制の構築①(総論)」において、日本では、諸外国と比べ、総病床数が多く、平均在院日数も長い。人口当たりの医師数は少なくないが、病床百床当たりの医師数は少ない。また、MRIやCTスキャナーの台数が極めて多く、外来受診回数も多い。医療費と相関性が高いとされる病床数は西高東低の傾向。診療所については、人口当たりでみても都市部に集中する傾向にある一方、1診療所当たりの従事者数が少ない。こうした現状に対し、人材確保も困難となる中、できる限りコストを縮減し、医療資源を効率的に活用することで、質の高い医療を提供する必要。地域の実情に応じ、病床数の適正化を図り、入院機能の高度医療への重点化を図るとともに、診療所を含めた外来機能を集約していくべきとした。

医療提供体制に関する各種指標の国際比較
なお、この表の日本における平均在院日数26.3日、平均在院日数(急性期)15.7日は2023年の数値で、それ以前から在院日数の削減を誘導してきたにもかかわらず、欧米諸国に比べると両在院日数とも2倍以上長く、病床数はドイツと比べ1.6倍、他の国と比べ2~4倍と多い。日本においては、24年あたりからの病院における入院患者の急激な減少、日帰り手術の増加により在院日数の短縮化と病床削減が始まっており、それら反映すると両在院日数や病床数の差は若干、縮まる可能性がある。
⦿診療所は地域単位での外来機能の統合・大規模化
診療所については、41ページ「効率的な医療提供体制の構築②(診療所)」で、全国で既に10万施設を超えており、人口減少下で外来需要が減少していくことが明らかであるにもかかわらず、増加を続けている。また、1診療所当たりの平均従事者数は、各職種いずれも1~2名程度と、非常に小規模な形態となっている。年齢に応じて病院から診療所へ移行してきたこれまでの医師の傾向が今後も続く場合、診療所開設のペースは継続するおそれがあると指摘。さらに、小規模分散の診療所の体制により、受付・事務・IT・検査等の機能が施設ごとに散在し、検査設備やシステムへの投資が重複することに加え、医療人材の効率的活用にも制約が生じやすいため、限られた医療資源のより効率的な活用の観点から、地域単位での外来機能の統合・大規模化や医療機器共同調達化を進める必要があるとしている。
⦿薬局の集約化や大規模化は不可避
薬局に関して42ページ「効率的な医療提供体制の構築③(薬局)」では、過去30年間で、薬局数は6割以上増加し、薬局に従事する薬剤師の数は3倍以上となっている。また、薬局は小規模な形態が大部分を占めている。提供体制の効率化がなされないまま、人材の流入が継続してきたことが見て取れる。こうした小規模分散の体制は、対人業務の充実や安定的な医薬品供給の観点から問題 。限りある医療人材の最適配分を実現し、 効率的な医療提供体制を構築する観点から、薬局の集約化や大規模化に向けた取組が不可避であるとした。
⦿包括払い化と少人数医療の評価へ
43ページ「医療提供の効率化を支える報酬体系の構築」では、人口減少社会であっても質の高い医療が持続的に提供されるよう、診療報酬の在り方も見直していく必要。特に、医療従事者の持続的な賃上げと保険料負担の抑制の両立のためには、医療現場の省力化・効率化と「一人あたり賃金」の向上の好循環が実現していくこと及び、それを支える診療報酬体系を構築していくという視点が重要である。現在の診療報酬体系は、ストラクチャー評価やプロセス評価を基礎としており、出来高払いが中心となっていることから、個々の医療機関で見れば、手厚い人員配置の下で、より多くの医療を提供することが合理的な選択となってしまっている。2026年度診療報酬改定で導入された配置基準の柔軟化は一定の変化の兆しではあるが、「量の競争」による過剰な診療行為や検査を誘発しかねない診療報酬体系の構造的課題は残されたまま。 アウトカム評価を中心に据えた上で報酬の包括払い化を進めること、医療の質を確保しつつ、できるだけ少ない人員で医療を提供することに対して適切に評価できる報酬体系に転換すべきとしている。
⦿介護の生産性向上~利用者増~収入増・投資増の循環確立が重要
また、44ページ「介護現場の生産性向上」に関して、介護人材の確保と、保険料負担の抑制の両立に向けて、介護報酬による賃上げのみならず、介護現場が生産性向上に取り組み、対応可能な利用者が増え、収益が増加することで、職員の賃上げと、さらなる生産性向上投資につながる、という好循環を実現することが重要。介護現場における介護テクノロジーの導入は、政府による補助の効果もあって、近年進んできてはいるが、道半ばの状況。介護テクノロジー導入のきっかけは、理事長や施設長の提案であることが多いことも踏まえると、介護事業所が、介護テクノロジーの導入をさらに進め、適切に活用するためには、経営層の意識改革が必要。政府としては、介護テクノロジーの導入や協働化・大規模化による介護現場の生産性向上の促進と、介護施設における人員配置基準の柔軟化を進めるべきであるとしている。
⦿善光会、おおさわの福祉会、大翔会が好事例
そのうえで、45ページ「介護現場の生産性向上の好事例」として、善光会(東京都)、おおさわの福祉会(富山県)、大翔会(大分県)の事例を紹介した。
⦿介護サービス需要の減少を見極め供給過剰に留意
さらに、46ページ「人口減少地域における介護サービス提供体制の構築」として、介護サービス利用者数は、全国でみると2040年のピークに向けて増加する見込みだが、地域別にみると、2割近くの市町村で既にピークを迎えており、こうした市町村では、2040年に向けて、1割程度利用者数が減少する見込み。また、2040年に高齢者人口の減少が見込まれる地域では、足もとで介護事業所の減少がみられる。高齢者人口が減少し、介護サービス需要が減少する地域においては、市町村や都道府県が、将来の介護サービス需要を見極め、需要に対してサービスの供給が過剰にならないように留意しつつ、今回の介護保険制度改革で導入される「特定地域サービス」等を活 用しながら、配置基準のさらなる柔軟化、介護事業所の多機能化・広域化を推し進めることで、地域の実情に応じて、介護サービス提供を効率化しつつ、必要な介護サービスが維持されるサービス提供体制を構築することが考えられるとしている。